不正咬合(歯列不正)は、上下の大臼歯の咬合関係(位置関係)によってアングルⅠ~Ⅲ級に分類します。
アングルⅠ級:上下の大臼歯が正常な場合
アングルⅡ級:下顎の大臼歯が、上顎の大臼歯よりも相対的に後方にあるもの(出っ歯の状態がこれにあたる)
アングルⅢ級:下顎の大臼歯が、上顎の大臼歯よりも相対的に前方にあるもの(受け口の状態がこれにあたる)
矯正治療が最も容易なものは、当然初めから奥歯の咬合状態が正常であるアングルⅠ級です。
これは、奥歯の前後的な補正を行う必要が無いためで、非抜歯で治療できるケースもあります。
これに対して、Ⅱ級およびⅢ級では咬合関係の補正あるいは補償をするために、ほとんどのケースで抜歯およびIPR(ディスキング、ストリッピング)が必要になります。
また、外科矯正が適応になるケースも多々あります。
このように、アングルの分類は治療計画を立てるうえで非常に重要となります。
矯正治療で便宜抜歯を行ってスペースを確保する場合、最も頻度が高いのは第一小臼歯(4番)を抜歯するケースです。
しかし、咬合関係がⅡ級あるいはⅢ級の場合には、第二小臼歯(5番)を抜歯することも多々あります。
上下の歯並びや咬合関係によっては、変則的に側切歯(2番)や犬歯(3番)を抜歯するケースも稀にあります。
抜歯部位の判断は、治療の難易度や期間、年齢、歯や歯並びの状態などを総合的に判断行います。
基本的には、偶数本を便宜抜歯することで、歯列と顔貌の左右対称性を図ることが多いですが、抜歯本数を極力減らすために変則的な抜歯(奇数本の抜歯や、小臼歯以外の抜歯)を行うこともしばしばあります。
初診時。上下のクラウディング(叢生、乱杭歯)の改善を希望して来院。下顎前歯部の叢生が顕著。上顎前歯は捻転(ねじれ)および前突しており、歯軸の改善が必要な軽度アングルⅢ級のケース。上下顎ともに顕著な骨隆起(骨の出っ張り)を認め、咬合力の強さやブラキシズム(歯ぎしりや食いしばり)の習慣が疑わる。このようなケースでの4本の便宜抜歯は、咬合の観点からリスクが高いと思われる。総合的に判断し、上顎はIPR(ディスキング、ストリッピング),下顎は左側中切歯1本の便宜抜歯を行って3本前歯(スリーインサイザー)にして、歯列矯正を行うこととした。
矯正治療後。上下ともに左右対称なきれいな歯列になっている。前歯部のクラウディングおよび前突が改善し、美しい口元となった。下顎前歯が3本となった関係で、上下の正中は一致しないが、機能的にはまったく問題はない。最少の抜歯本数、臼歯部の咬合関係を大幅に変化させずに治療できたメリットは大きい。
矯正治療は、治療前の診断および治療計画が非常に重要です。
一旦、抜歯やIPRを行えば、それを元に戻すことは不可能なため、計画に無理があると後々修正することは困難になります。
最初に描いた治療の青写真、完成予想図以上に良い治療結果は生まれないものです。
したがって、矯正治療を受けるに当たっては、術前に担当の先生と十分なカウンセリングを行うことが重要となるのです。
治療期間:1年6か月
治療費:全顎矯正¥880,000
治療におけるリスク:矯正治療では歯肉退縮および歯根吸収、知覚過敏、稀に歯髄壊死が生じる可能性があります。
神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック日付: 2024年11月14日 カテゴリ:コラム, 矯正歯科