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カテゴリ: コラム

アングルⅢ級(軽度) クラウディング(叢生、乱杭歯)の治療例~スリーインサイザー(3 incisor)~

不正咬合(歯列不正)は、上下の大臼歯の咬合関係(位置関係)によってアングルⅠ~Ⅲ級に分類します。

アングルⅠ級:上下の大臼歯が正常な場合

アングルⅡ級:下顎の大臼歯が、上顎の大臼歯よりも相対的に後方にあるもの(出っ歯の状態がこれにあたる)

アングルⅢ級:下顎の大臼歯が、上顎の大臼歯よりも相対的に前方にあるもの(受け口の状態がこれにあたる)

 

矯正治療が最も容易なものは、当然初めから奥歯の咬合状態が正常であるアングルⅠ級です。

これは、奥歯の前後的な補正を行う必要が無いためで、非抜歯で治療できるケースもあります。

これに対して、Ⅱ級およびⅢ級では咬合関係の補正あるいは補償をするために、ほとんどのケースで抜歯およびIPR(ディスキング、ストリッピング)が必要になります。

また、外科矯正が適応になるケースも多々あります。

このように、アングルの分類は治療計画を立てるうえで非常に重要となります。

 

矯正治療で便宜抜歯を行ってスペースを確保する場合、最も頻度が高いのは第一小臼歯(4番)を抜歯するケースです。

しかし、咬合関係がⅡ級あるいはⅢ級の場合には、第二小臼歯(5番)を抜歯することも多々あります。

上下の歯並びや咬合関係によっては、変則的に側切歯(2番)や犬歯(3番)を抜歯するケースも稀にあります。

抜歯部位の判断は、治療の難易度や期間、年齢、歯や歯並びの状態などを総合的に判断行います。

基本的には、偶数本を便宜抜歯することで、歯列と顔貌の左右対称性を図ることが多いですが、抜歯本数を極力減らすために変則的な抜歯(奇数本の抜歯や、小臼歯以外の抜歯)を行うこともしばしばあります。

 

初診時。上下のクラウディング(叢生、乱杭歯)の改善を希望して来院。下顎前歯部の叢生が顕著。上顎前歯は捻転(ねじれ)および前突しており、歯軸の改善が必要な軽度アングルⅢ級のケース。上下顎ともに顕著な骨隆起(骨の出っ張り)を認め、咬合力の強さやブラキシズム(歯ぎしりや食いしばり)の習慣が疑わる。このようなケースでの4本の便宜抜歯は、咬合の観点からリスクが高いと思われる。総合的に判断し、上顎はIPR(ディスキング、ストリッピング),下顎は左側中切歯1本の便宜抜歯を行って3本前歯(スリーインサイザー)にして、歯列矯正を行うこととした。

 

矯正治療後。上下ともに左右対称なきれいな歯列になっている。前歯部のクラウディングおよび前突が改善し、美しい口元となった。下顎前歯が3本となった関係で、上下の正中は一致しないが、機能的にはまったく問題はない。最少の抜歯本数、臼歯部の咬合関係を大幅に変化させずに治療できたメリットは大きい。

 

矯正治療は、治療前の診断および治療計画が非常に重要です。

一旦、抜歯やIPRを行えば、それを元に戻すことは不可能なため、計画に無理があると後々修正することは困難になります。

最初に描いた治療の青写真、完成予想図以上に良い治療結果は生まれないものです。

したがって、矯正治療を受けるに当たっては、術前に担当の先生と十分なカウンセリングを行うことが重要となるのです。

治療期間:1年6か月

治療費:全顎矯正¥880,000

治療におけるリスク:矯正治療では歯肉退縮および歯根吸収、知覚過敏、稀に歯髄壊死が生じる可能性があります。

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日付:  カテゴリ:コラム, 矯正歯科

外傷による歯牙破折の治療例~E-Max~

歯の外傷により、歯が欠けることがしばしばあります。

特に上顎の前歯はぶつけやすく、切端(先端)の部分が欠けることが多いです。

前歯の切端は、一度欠けるとコンポジットレジンで修復しても、食事の時に食べ物が当たってしまい、わりとすぐに再び欠けてしまいます。

また、コンポジットレジンは経年劣化により、変色や褐線を生じやすく、しばしば審美的に障害となります。

このような場合には、セラミックによる歯冠修復が適応になります。

 

治療前。歯の外傷により切端が欠けている状態。コンポジットレジンにて修復してあるものの(矢印)、変色や段差、褐線が気になり改善を希望。セラミッククラウンによる歯冠回復を行うこととした。

 

治療後。オールセラミッククラウン(E-Max)による審美補綴を行った。歯の透明感、色合い、形態、歯肉との調和が良く、天然歯との見分けがつかない。

 

虫歯や歯ぎしりでも、同様に歯の切端が欠けることがあります。

切端部分をコンポジットレジンで修復しても、再び欠けることは避けられません。

長期的に審美性を維持し、食事の際にも欠けにくくするためには、セラミックによる修復を検討してみると良いでしょう。

 

治療費:セラミッククラウン(E-Max)¥132,000

治療期間:2週間

治療におけるリスク:硬い食べ物は稀にセラミックが欠けることがあります。

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部分矯正(MTM)によるクラウディング(叢生、乱杭歯)の改善~部分矯正は実は簡単ではない!~

矯正治療を希望される人のほとんどが、前歯の歯並びの改善を希望しているかと思います。

部分的な矯正治(MTM)は、簡単なように見えて、実は上下の歯の噛み合わせを合わせるのが非常に難しい治療です。

特に上顎だけあるいは下顎だけのように、片方だけの歯並びの改善・治療を希望する場合、基本的に嚙み合わせを合わせることは困難です。

これは、上下の歯並びは対になっており、悪い歯並び同士で辻褄が合っているためです。

上下のいずれかだけの歯並びを治すとバランスが崩れ、歯並びはきれいに並んだものの噛みにくくなることがあります。

その点、全顎矯正は全体を動かすことが出来るため、咬み合わせの改善を図ることが可能です。

 

治療前。下顎前歯部のクラウディングの改善を主訴に来院。以前、他院にて矯正治療を行ったが、後戻りしたため再矯正を希望。上顎は気になっておらず、下顎だけの改善を希望。下顎を前方に動かすと、左側中切歯(向かって右)だけしか噛み合っていないのが分かる。このような噛み合わせは、咬合性外傷による歯周病に罹患しやすい。

 

矯正治療後。ディスキング(IPR、ストリッピング)を行い、歯と歯の間にわずかな隙間を作り歯並びを改善。下顎前歯部はきれいに並び、下顎前方運動時も左右の中切歯が均等に咬合するようになった。

 

部分矯正(MTM)は、費用、期間などの点で魅力的に感じるかもしれません。

しかし、部分矯正では基本的に便宜抜歯をしないため、歯並びを整えるスペースを十分に確保することは難しく、難易度は高いのです。

特に重度のクラウディング(叢生、乱杭歯)の程度が強い場合、歯並びをきれいにすると結果的に出っ歯になったり開咬(オープンバイト)になることもあります。

矯正治療をお受けになる際には、治療後の仕上がりについて、術前に十分なカウンセリングをお受けになる必要があるでしょう。

治療費:¥440,000

治療期間:6か月

治療におけるリスク:歯列矯正では歯根吸収や歯肉退縮、知覚過敏が生じる可能性があります。

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根管治療の成功率と被せ物の精密さ~精密な被せ物を被せないと、根管治療は成功しない!~

根管治療を精密に行うことは、歯を良い状態で長く保つために非常に重要です。

歯の内部は直接見えないだけでなく、神経を失った歯は異常があっても痛みを感じません。

そのため、歯の内部で起こっている問題が、歯や歯茎の痛みや腫れ、被せ物の脱離などの症状として露呈した場合には、治療としては手遅れとなっている場合が少なくありません。

最近では、根管治療の難しさや重要性が少しずつ患者さんにも認識されてきていると感じています。

ここでさらに重要なことは、根管治療の精密さと治療の成功率にどのような相関があるです。

 

これは、根管治療の精度とその後に被せる被せ物の精度が、根管治療の成否にどの程度影響しているかを示した表です。

根管治療が精密であれば、当然ながら根管治療の成功率は高くなります。

根管治療の精度が低ければ、もちろん根管治療の成功率は低くなります。

しかし、根管治療の精度が高くても、被せ物の精度が低いと(保険)、根管治療の成功率はかなり低くなり、半分以下となってしまいます。

ここで重要となる事実は2つ。

根管治療の精密さと根管治療の成功率は相関する。

被せ物の精密さと根管治療の成功率は相関する。

つまり、根管治療の成功を最終的に決定付けるものは、実は被せ物(補綴)であると言えます。

いくら精密な根管治療を行っても、その後に被せる被せ物の精度が悪いと、バクテリアが非常に小さな隙間からリークして、根管治療の成功率そのものが悪くなるということです。

このことからも、自費の根管治療と自費の被せ物はセットで受けるべきであることが分かります。

治療は、どこか一部分でも良くない過程があると、全体に影響を及ぼします。

全ての治療がトータルで高い精度を満たした時に、歯の寿命が最も長くなるのです。

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日付:  カテゴリ:コラム, 根管治療

オールセラミッククラウンによる審美治療の例~歯周組織の健康が、差し歯の審美性を左右する~

差し歯や被せ物そのものは、材料としての耐久性はあるものの、時間とともに歯茎の退縮が起こることは避けられません。

この歯肉退縮による審美障害が、差し歯や被せ物のやり替えの理由として非常に多いです。

歯茎が薄い人は歯茎の退縮が起こりやすく、歯茎が厚い人は退縮しにくいといえます。

また、ブラッシング圧の強い人も歯茎が退縮しやすいです。したがって、適切な力加減で歯磨きをすることはとても重要です。

また、歯周病のある人や歯周ポケットが深めの人は、歯茎の高さが不安定なため退縮しやすいので、あらかじめ歯周病治療を行っておく必要があります。

 

治療前。上の前歯の審美的な改善を希望して来院。上顎前歯4本にメタルセラミッククラウンが装着されている。装着してから時間が経ったためか、歯肉退縮により歯茎との境目が黒くなってきている(ブラックマージン)。色調は透明感があまりなく、やや白さが浮いている。根管治療からやり替えることとした。

 

ファイバーコア装置時。ファイバーコアを装着するにあたって、再根管治療を行った。歯を被せるにあたっては、根管治療がきちんと行われているかを確認する必要がある。根管治療が不完全なまま被せると、後々歯茎が腫れたりして、せっかく被せた被せ物をやり替える必要性がでてくることがあるので注意が必要。

 

治療後。E-Max(2ケイ酸リチウム)にて被せ物を製作した。E-Maxは透明感があって歯との色味も合いやすく、歯との適合精度も非常に良い。ブラックマージンも解消し、自然な仕上がりになった。

 

前歯部の審美性は、歯と歯茎との調和で決まります。

術後は適切なブラッシングを行い、歯周組織の健康の維持を心がけましょう。

 

治療費:オールセラミッククラウン¥132,000/1歯

治療期間:1か月

治療におけるリスク:正しくブラッシングをしないと虫歯が再発したり、歯肉退縮を起こします。

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アングルⅠ級 クラウディング(叢生、乱杭歯)の歯列矯正治療~非抜歯ケース~

歯列矯正において、抜歯か非抜歯を決める決定的な要素は、歯の大きさと顎骨の大きさとの差異・不一致(ディスクレパンシー)です。

顎骨の大きさに対して歯の大きさが大き過ぎる場合には、歯はきれいに並ばずクラウディング(叢生、乱杭歯)を呈します。

また、顎骨の大きさに対して歯の大きさが小さい場合には、歯と歯の間に隙間を生じる歯列不正である空隙歯列となります。

歯列不正の頻度として多いのは、前者である顎骨の大きさよりも歯の大きさの方が大きいケースです。

この顎骨と歯の大きさとの不一致(ディスクレパンシー)がある場合には、歯をきれいに並べるために小臼歯の便宜抜歯や、歯のディスキング・IPR(Inter-proximal Reduction)・ストリッピングなどを行って歯列に隙間を作り、ディスクレパンシーの解消を行って歯を並べていきます。

デイスクレパンシー(顎骨と歯の大きさの不一致)の程度が大きければ抜歯が必要となり、ディスクレパンシーの程度が小さければ抜歯せずディスキング(IPR、ストリッピング)でスペースを確保し、歯をきれいに並べることが出来ます。

多少無理をすれば、ディスキング(IPR、ストリッピング)をして非抜歯で歯を並べることができるかもしれません。

しかしながら、抜歯をしたくないからと言って、無理な非抜歯での矯正治療は、歯根が歯槽骨からはみ出して歯肉退縮を招き、前歯は前突して出っ歯になったり開咬(オープンバイト)になる可能性が高く、噛み合わせが悪くなったり、将来歯を失うリスクが高まります。

したがって、抜歯か非抜歯かを決める際には、客観的な判断がきわめて重要となります。

 

非抜歯で矯正治療ができる典型的な歯列不正は、顎骨と歯の大きなのディスクレパンシーが少ない、上下的に奥歯のずれの無いアングルⅠ級のクラウディング(叢生、乱杭歯)のケースおよび空隙歯列のケースでしょう。

特に歯列の横幅が狭窄しているケースでは、歯列の側方拡大によって歯が並ぶスペースを確保できるため、歯列矯正は比較的難易度は低く、治療期間も少なくて済む場合が多いです。

これに対し、アングルⅡ級(出っ歯)およびⅢ級(受け口)のケースは、一般的に抜歯が必要となります。

 

初診時口腔内。前歯部の反対咬合(クロスバイト)およびクラウディング(叢生、乱杭歯)の改善を希望し来院。小臼歯部には鋏状咬合(シザーズバイト)も認め、咬合状態は良くない。下顎歯列弓はやや横幅が狭窄したV字型を呈し、顎骨と歯の大きさのディスクレパンシーは大きくない。前歯部の歯軸および突出感もあまりないため、下顎歯列の側方拡大による非抜歯矯正が可能と判断される。

 

矯正治療後口腔内。非抜歯側方拡大によるワイヤー矯正を行った(ディスキングなし)。前歯部の反対咬合(クロスバイト)およびクラウディング(叢生、乱杭歯)が改善しているのが分かる。上下の歯列弓は、左右対称の美しいU字型のアーチフォームに修正され、小臼歯部の鋏状咬合(シザーズバイト)も改善し、咬合状態が正常化した。非抜歯ケースであるため、治療期間も最小限。

 

アングルⅠ級のケース(上下の奥歯にずれの無いケース)は、抜歯・非抜歯の判断を間違えなければ、矯正治療の難易度は高くありません。

最近では、デジタル化によって術後のシミュレーションを行えるようになってきましたが、これはあくまでもシミュレーションであり、術後の歯並びや顔貌を正確に再現しているわけではありません。

シミュレーションでは顎骨や歯肉、口唇、顔貌などの状態を正しく評価することは出来ないため、治療結果がシミュレーション通りにいかない可能性があります。

最終的には、歯科医による客観的な診断が正しく矯正治療を行う上で最も重要となるでしょう。

 

治療期間:1年6か月

治療費:¥980,000(保定装置含む)

治療におけるリスク:矯正治療によって歯肉退縮および歯根吸収、知覚過敏生じる可能性があります。治療後の保定を怠ると、歯並びの後戻りを生じます。

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アングルⅠ級 上下顎前突(出っ歯)の治療例~抜歯ケース~

アングルⅠ級とは、6番(6歳臼歯)の上下関係が正常なもの(ずれが無いもの)を指します。

Ⅱ級は下顎が相対的に後方にあるもの(通常出っ歯の様相を呈する)、Ⅲ級は下顎が相対的に前方にあるもの(通常受け口の様相を呈する)と分類します。

この診断は、矯正治療をするうえで非常に重要です。

ほとんどの矯正患者さんは、前歯の歯並びが気になって矯正治療を希望します。

しかし、矯正治療の治療においては、6番の上下関係(アングルの分類)が正常咬合に導けるかどうかが治療の難易度を決定付けます。

 

一般的に、矯正治療では奥歯(臼歯)を支え(固定源)として前歯を動かして歯並びを整えます。

この時、上下の奥歯の位置関係は非常に重要になります。

上下のずれの無いⅠ級咬合では、その関係を維持したまま治療を行う計画を立てます。

もともと臼歯の前後関係にずれのあるⅡ級やⅢ級の場合には、その関係を正常(Ⅰ級)に改善するのか、あるいはずれを許容したまま治療を完結させるのかを最初に決定する必要があります。

これによって、固定源を補強するか否かを検討していきます。

固定の強さは次のように分類されます。

①最大の固定:抜歯スペースの1/4以上のアンカーロス(臼歯の近心移動)が許されない場合

②中等度の固定:抜歯スペースの1/4∼1/2の範囲でアンカーロスを許容される場合

③最小の固定:抜歯スペースの1/2以上のアンカーロスが許容される場合

これらを考慮した上で、固定源の補強や方法を検討していきます。

 

初診時。アングルⅠ級上下顎前突およびオープンバイト(開咬)の例。上下前歯に軽度クラウディング(叢生)を認める。上下とも歯列幅径は十分に広く、開咬を呈することから、上下左右の小臼歯4本の抜歯が必要なケース。このようなケースを非抜歯で無理に治療すると、仕上がりはうまくいかない。上下の臼歯の位置関係をなるべくずらさないように、上顎にはTPA(トランスパラタルアーチ)を併用して固定源を補強し治療していく。

 

矯正治療後。小臼歯の便宜抜歯を行い前歯の十分な移動スペースを確保したことにより、前歯が内側に入って出っ歯が改善し、美しい口元になった。オープンバイトも改善したことで、前歯で食べ物も噛み切れるようになった。

 

矯正治療は、治療計画によって仕上がりが全く異なるものになります。

本来は抜歯ケースであるにも関わらず、無理な非抜歯治療を行うと、出っ歯になったり、歯肉退縮の原因にもなります。

治療前に十分なカウンセリングをお受けになることが重要です。

 

治療期間:2年

治療費用:¥880,000

治療におけるリスク:歯の移動に伴い、歯肉退縮、知覚過敏、歯根吸収が起こる可能性があります。

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矯正用インプラントの種類と用途~スクリュータイプとプレートタイプの違い~

矯正治療では、積極的に動かしたい歯と動かさずにその場に留めておきたい歯があります。

通常、動かしたくない或いは動かさない歯を固定源(アンカー)として、位置の悪い歯を動かして歯並びを整えていきます。

この場合、ゴムやコイルなどで歯を動かすと、必ず作用・反作用の法則に基づきお互いの歯が動きます。

動かしたくない歯までも動くのが、通常の矯正治療では起こるのです。

これを解決できる方法として、矯正用のインプラントを用いたインプラント矯正があります。

矯正用インプラントには大きく分けて2通りのものがあります。

①スクリュータイプ(ネジタイプ)

②プレートタイプ

 

スクリュータイプ・インプラントアンカー。直径1.2~2.0mm、長径6~10mm程度と細くて短い。基本的に歯肉を切開することなく骨に設置でき、痛みや腫れはほとんど出ない。インプラントの直径が細いため、部位によってはしばしば緩んで脱落することがある。

 

スクリュータイプ・インプラントアンカーの使用例。設置は5分とかからず、患者さんの負担はほとんどない。固定力は強くないため緩みやすく、多数歯の移動には向いていない。

 

スクリュータイプ・インプラントアンカーの口蓋への使用例。2本のアンカースクリューを固定源として用いることで、上顎すべての歯の遠心移動を行う(PLAS:パラタル・レバー・アーム・システム)。複数本のアンカースクリューを応用することにより、多様な歯の移動が可能となる。

 

プレートタイプ・インプラントアンカー。骨の表面に2~3本のネジで固定する。固定力は非常に強固で、多数歯の移動や臼歯の遠心移動、圧下にも容易に対応でき、矯正治療期間の大幅な短縮や難症例の改善が見込める。設置は歯槽粘膜を大きく切開剥離するため、術後に腫れや痛みを生じやすい。

 

プレートタイプ・インプラントアンカーの使用例。臼歯部を一塊で遠心(後方)に移動している。固定源として強力で、緩むことはほとんどない。治療期間中、しばしば細菌感染により腫れることがあるため、衛生状態を良好に保つ必要がある。

 

使用する矯正用インプラントや適応部位は、その症例に応じてケースバスケースです。

なるべく患者さんの負担が少ないこと、また治療上の有益性を考慮して選択します。

不明な点は、担当医に遠慮なく相談すると良いでしょう。

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根管治療後の痛みや違和感の原因について

根管治療中や治療直後には、痛みや違和感が生じることが少なくありません。

主に次のようなことが原因として考えられます。

➀治療中に根尖部(歯根の先端)の組織を器具で刺激している場合

②根管充填(最終的な薬を詰めること)に伴うもの

③今までの治療ですでに根尖部が破壊されており、再治療で根尖部を弄らざるを得ない場合

④歯髄(神経)が完全に取り除けていない場合(残髄)

⑤根管内に感染源が残っている場合

⑥薬剤による刺激(根管貼薬および洗浄消毒液)

⑦過度の器具の根尖外への突き出し(オーバーインスツルメンテーション)や過剰な根管充填(オーバー根充)

⑧根管治療では治らないケース(歯根破折やパーフォレーション、歯根嚢胞などの予後不良なものなど)

 

上記の➀、②はきちんと根管治療が行われていても臨床的によく起こるもので、時間とともに(ほとんどが2,3日~1週間程度)症状は治まっていくので心配はありません。

③のケースはそもそも治療自体が非常に難しく、治療の成功率もやや低くなります。

④~⑦は手技によるもので、術者の技量によります。

⑧は外科的歯内療法もしくは抜歯のケースで、根管治療では治癒が見込めないケースです。

 

初診で来院される患者さんは、根管治療後(治療済みも含め)の痛みや違和感を訴えている方がほとんどです。

まずは、痛みや違和感の原因を正しく診断することが重要となります。

ここを見誤ると、治せるものが治らず、治らないものを永遠と治療する結果になってしまいます。

 

初診時レントゲン。他院にて右側下顎第二大臼歯の抜髄(神経を取る治療)・根管充填処置を受けたものの、咬んだり指で叩くと痛んだり、フロスを通すと違和感があるため再治療を受けた。しかし症状の改善がなく、詰めた薬も取れないため抜歯を宣告され当院に来院。レントゲンおよびCT画像では、抜歯と診断する理由が見当たらない。残髄もしくは感染源の取り残しが原因と考え、再根管治療を行うこととした。

 

根管充填後レントゲン。フロスを通したときの違和感は多少残っているものの、痛みは完全に消失したため根管充填を行った。このような一見まったく問題のない歯を抜歯と診断することに驚きを隠せない。

 

明確な理由が無いにもかかわらず、痛みや違和感あるというだけで抜歯と宣告されることがあります。

このような場合には、まずはセカンドオピニオンをお受けになり、抜歯が必要となる明確理由を尋ねてみてください。

ご自身が納得していない治療を受ける理由はどこにもないのですから。

 

治療費:精密根管治療¥99,000/大臼歯

治療期間:3週間

治療におけるリスク:根管治療の成功率は100%ではありません

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歯性上顎洞炎は抜歯が第一選択ではない!~抜歯が必要と言われたら~

4つある副鼻腔のうちの一つである上顎洞。

上顎洞は頬の内側、目の下部、上顎臼歯の上部に存在する副鼻腔の一つです。

上顎臼歯とは非常に近接しており、歯根が上顎洞の中に入っているものも少なくありません。

上顎臼歯が何らかの影響で炎症が起こり、炎症が広がって上方に向かうと、上顎洞の内部に炎症を惹起します。

これを歯性上顎洞炎と呼んでいます。

歯性上顎洞炎の原因となるものは、慢性辺縁性歯周炎(いわゆる歯周病)、慢性根尖性歯周炎(いわゆる根尖病巣)、そのほかに歯根破折やパーフォレーション(穿孔)などが挙げられます。

これらの原因中で、歯の治療を行って治るものは慢性根尖性歯周炎(根尖病巣)です。

歯周病や歯根破折の場合には、歯の治療を行っても治らず、無駄に時間を費やし、鼻症状を酷くしてしまうので、早期に抜歯を行うことが得策です。

中には、歯の異常があるにも関わらず、耳鼻科に1年以上通院しているケースを見かけますが、歯が原因の上顎洞炎は耳鼻科に通院し続けても治らないので注意が必要です。

 

初診時レントゲン。他院にて右側上顎第二大臼歯の歯性上顎洞炎の診断を受け、抜歯と宣告され初診来院。右側上顎第二大臼歯部には大きな虫歯治療がしてあり、根尖部には黒いレントゲン透過像を認め(矢印)、歯髄壊死を窺わせる。

 

初診時CT画像。根尖部には根尖病巣による黒いCT透過像を認める。根尖病巣が大きくなり、上顎洞の内部にもCT不透過性の炎症像を認める(軽微な歯性上顎洞炎/矢印)。このような軽微な歯性上顎洞炎(上顎洞粘膜の肥厚)は、正しく根管治療を行えば治癒する可能性が極めて高い。

 

根管治療後レントゲン。根尖までしっかりと白い薬が入っているのが分かる。

 

根管治療後CT画像。根尖部の上顎洞の粘膜肥厚は消失し(矢印)、歯性上顎洞炎は治癒してきているのが分かる。

 

歯性上顎洞炎は、必ずしも抜歯が治療の第一選択ではありません。

抜歯が第一選択になるのは、歯周病によるもの及び歯根破折によるものです。

診断を正しく行わないと、治るものも治らず、不要に抜歯を行うことになりかねません。

もし、歯性上顎洞炎と診断されたら、経験豊富な信頼できる歯科医院でご相談されることをお勧めいたします。

 

治療費:精密根管治療¥99,000/大臼歯

治療期間:3週間

治療におけるリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。

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