歯を強くぶつけたり、大きな虫歯治療後に歯の神経が壊死してしまうと、歯の変色が起こります。
歯の変色の程度や、虫歯による歯の欠損の大きさなどによって、変色を改善する治療法は異なります。
大きく分けると
①歯を削り、セラミッククラウンで改善する
②歯の色を漂白する(ウォーキングブリーチという)
歯の色の変色が強い場合は、ウォーキングブリーチでは色の改善が見込めません。
また、歯が大きく欠損していたり、クラック(ヒビ割れ)が生じている場合も、ウォーキングブリーチの適応にはなりません。
クラックが生じている場合にウォーキングブリーチを行うと、そのクラックを通じて漂白薬剤が漏洩して歯根吸収や歯槽骨吸収を惹起する可能性が高く、抜歯に至る可能性が高まります。
したがって、歯の状態によって歯の変色の治療法を決定することが重要です。
治療例①
初診時口腔内。左側中切歯(向かって右)の歯の変色の改善を希望して来院。根管治療はきちんとされていたものの、すでに歯の内部が大きく削ってあり、歯の変色も強い。オールセラミッククラウンによる治療が適切と診断した。
治療後口腔内。ジルコニアオールセラミッククラウンにて審美的な改善を行った。歯の神経が無くなると歯根自体の色も暗く変色してしまう。歯肉の黒ずみはかなり改善されているものの、歯肉の薄い日本人は歯根の色が歯肉を通して透けて見えやすい。
治療費:オールセラミッククラウン¥132,000
治療期間:3週間
治療によるリスク:きちんとブラッシングを行わないと、虫歯や歯周病に罹患する可能性があります。硬いものを噛むと、セラミックや歯根が割れる可能性があります。
治療例②
初診時口腔内。左側中切歯(向かって右)の変色を主訴に来院。転んで歯を強打し、歯髄壊死をきたして歯の変色を生じた。歯の欠損はまったくなく、歯質は十分に保たれている。ウォーキングブリーチの適応と診断した。まずは適切な根管治療を行う。
歯の裏側から根管治療を行った後、漂白剤が歯根の先端の方に漏出しないよう、根管充填材の上部にレジンを緊密に充填し、漂白剤の入るスペースを確保する。漂白剤は1週間間隔で数回交換を行う。
変色の程度が強かったため、歯の表面からのホワイトニングも並行して行った。
ウォーキングブリーチ終了時。歯の変色は改善し、自然な色合いとなった。歯の裏側はコンポジットレジンにて充填した。
治療前、治療後。歯を大きく削ることなく歯の色を改善できるのが、ウォーキングブリーチの最大のメリット。ただし、適応症は限られる。
治療費:ウォーキングブリーチ基本料¥11,000(薬剤交換¥4,400/1回)
治療期間:1か月
治療によるリスク:まれに歯根吸収を起こすことがあります。
どの治療法にも、それぞれにメリット・デメリットおよび適応・不適応があります。
治療をお受けの際は、担当の先生と治療法に関してよくご相談されると良いでしょう。
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神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック
日付: 2023年12月3日 カテゴリ:コラム, 審美歯科