現代人は顎の骨が細くて奥行きが無く、歯も大型化しているために、親知らずが正常に萌出することが出来なくなっています。
多くの症例では、親知らずがきちんと磨けないために、虫歯になったり、歯茎が腫れたりして痛むようになります。
また、親知らずを残しておくことで、手前の第二大臼歯(7番)が虫歯になったり、押されて歯並びが悪くなることが多々あります。
第二大臼歯(7番)の遠心(後ろ、奥側)が虫歯になると非常に厄介です。
この場所は治療器具が入らないため、この部位が虫歯になると、歯の神経を取らざるを得なくなります。
歯は、歯の神経が残っていることで長持ちするのです。
もし、歯の神経を取ることになると、歯が割れたりひびが入ったり、根の先に膿を持ったり(根尖病巣という)し、抜歯になるリスクが大幅に増えてしまいます。
したがって、通常役に立たない親知らずは早めに抜歯すべきといえます。
しかしながら、親知らずの手前の第二大臼歯(7番)が虫歯や歯根破折、根尖病巣などで保存不可能になった場合、条件によっては奥にある親知らずを活用できることがあります。
初診時レントゲン。上顎第二大臼歯(7番、赤矢印)が大きな虫歯になり、他院で根管治療したものの、保存不可能と診断され抜歯を宣告されたため、当院に来院。歯の向きが悪く(奥側を向いている)、ファイル(根管治療の器具)の破折もあるため、治療は難しいと診断した。第二大臼歯の奥側には、親知らず(黄矢印)が斜めにぶつけっているのが分かる。CT診査にて、親知らずを矯正力で引っ張ることが出来ると判断。第二大臼歯抜歯後、矯正治療で親知らずを動かして活用することとした。
第二大臼歯(7番)抜歯後。親知らずを下前方に動かすため(矢印)、上顎の歯にワイヤーや装置を装着する。
矯正開始40日後。かなり下前方に移動しているのが分かる。さらに下前方に親知らずを引っ張っるためブラケットとワイヤーを装着する。
矯正開始130日後。ほぼ下方に引き終わっている。引き続き親知らずを前方に引っ張っていく。
矯正治療後。矯正期間190日。抜歯した第二大臼歯(7番)の部位に、親知らずの移動が完了した。後戻り防止のためワイヤーで保定を行う。
親知らずを矯正治療で動かすことが出来るか否かは、様々な条件によって異なります。
親知らずの位置や傾き、骨の硬さ、埋まっている深さ、歯と骨の癒合の有無、対合歯とのクリアランス(下の歯との隙間)、年齢(若いほうが動きやすい)、性別(骨の柔らかい女性の方が動きやすい)などを総合的に判断する必要があります。
これらの条件が良くてはじめて、矯正治療で親知らずを動かすことが可能になるのです。
まずは、CT撮影による診査が必ず必要になるでしょう。
詳しくお知りになりたい方は、担当の先生にご相談すると良いでしょう。
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