アングルⅠ級とは、6番(6歳臼歯)の上下関係が正常なもの(ずれが無いもの)を指します。
Ⅱ級は下顎が相対的に後方にあるもの(通常出っ歯の様相を呈する)、Ⅲ級は下顎が相対的に前方にあるもの(通常受け口の様相を呈する)と分類します。
この診断は、矯正治療をするうえで非常に重要です。
ほとんどの矯正患者さんは、前歯の歯並びが気になって矯正治療を希望します。
しかし、矯正治療の治療においては、6番の上下関係(アングルの分類)が正常咬合に導けるかどうかが治療の難易度を決定付けます。
一般的に、矯正治療では奥歯(臼歯)を支え(固定源)として前歯を動かして歯並びを整えます。
この時、上下の奥歯の位置関係は非常に重要になります。
上下のずれの無いⅠ級咬合では、その関係を維持したまま治療を行う計画を立てます。
もともと臼歯の前後関係にずれのあるⅡ級やⅢ級の場合には、その関係を正常(Ⅰ級)に改善するのか、あるいはずれを許容したまま治療を完結させるのかを最初に決定する必要があります。
これによって、固定源を補強するか否かを検討していきます。
固定の強さは次のように分類されます。
①最大の固定:抜歯スペースの1/4以上のアンカーロス(臼歯の近心移動)が許されない場合
②中等度の固定:抜歯スペースの1/4∼1/2の範囲でアンカーロスを許容される場合
③最小の固定:抜歯スペースの1/2以上のアンカーロスが許容される場合
これらを考慮した上で、固定源の補強や方法を検討していきます。
初診時。アングルⅠ級上下顎前突およびオープンバイト(開咬)の例。上下前歯に軽度クラウディング(叢生)を認める。上下とも歯列幅径は十分に広く、開咬を呈することから、上下左右の小臼歯4本の抜歯が必要なケース。このようなケースを非抜歯で無理に治療すると、仕上がりはうまくいかない。上下の臼歯の位置関係をなるべくずらさないように、上顎にはTPA(トランスパラタルアーチ)を併用して固定源を補強し治療していく。
矯正治療後。小臼歯の便宜抜歯を行い前歯の十分な移動スペースを確保したことにより、前歯が内側に入って出っ歯が改善し、美しい口元になった。オープンバイトも改善したことで、前歯で食べ物も噛み切れるようになった。
矯正治療は、治療計画によって仕上がりが全く異なるものになります。
本来は抜歯ケースであるにも関わらず、無理な非抜歯治療を行うと、出っ歯になったり、歯肉退縮の原因にもなります。
治療前に十分なカウンセリングをお受けになることが重要です。
治療期間:2年
治療費用:¥880,000
治療におけるリスク:歯の移動に伴い、歯肉退縮、知覚過敏、歯根吸収が起こる可能性があります。