根管治療での質問でとても多くいただくものに「保険と自費の根管治療は、何が違うのですか?」というものがあります。
結論から言うと、「何もかもまったく違う」とお答えします。
まず、大前提として、虫歯や根管治療などの歯の治療は、基本的には技術的な介入が必要な外科的処置です。
技術・手技の良否が、治療の予後に決定的な影響を与えます。
特に歯の神経の治療である根管治療は、歯の治療の中でも技術的に最も難しい治療のひとつなのです。
保険の治療では、治療したこと自体が保険点数として評価され、治療の内容はまったく勘案されません。
しっかりと治療をしても、そうでなくても、保険点数の評価は同じです。
しっかり治療をしようと思えば、当然、時間がかかりますし、器具や薬剤などのコストもかかります。
したがって、しっかりやってもやらなくても評価が同じとなると、結果は低きに流れてしまうのです。これは人間の相と言えるでしょう。
この点、自費の根管治療では、治療の技術、内容がまったく異なるのです。
根管の拡大、洗浄、消毒から薬剤の充填にいたるすべての治療工程において、妥協をせずに治療を行います。
治療にかかる時間、使用する薬剤などの制約は一切ありません。
より良い予後を得るために、あらゆる手段・手技を講じる、これが自費の根管治療なのです。
初診時レントゲン。歯の神経が取って被せてあるものの、根管治療は不十分で、歯根の中に薬がまったく入っていない。幸い根尖病巣は存在しない。このような治療でも、健康保険では診療報酬が満額支払われる。歯根の内部に黒い空洞が存在していることから、内部には多量のバクテリアや腐敗物質が存在している疑いが強い。
ファイル(治療用の器具)を試適し、根管の長さや湾曲を確認する。根管内が石灰化していたが、歯根の先端まで無事穿通できた。
根管充填後。歯根の先端までしっかりと緊密に白い薬が詰まっているのが分かる。これで安心して歯を被せることが出来る。
多くの患者さんが誤解しているのが、CTやマイクロスコープです。
これらを使う治療が自費治療で、使えばきちんと治療ができているだろうというものですが、それは幻想にすぎません。
これらを使用して治療をしたものの、根管に薬がきちんと詰まっていないケースも多く見ます。
治療器具は、術者がどう使うかということが重要であり、正しい診断、正しい技術があってはじめて高度な根管治療が可能となるのです。