深い虫歯の治療や、歯の外傷後、歯の色が変色してくることがあります。
これは、歯の中にある神経(歯髄:しずい)が壊死(えし:死んでしまうこと)してしまい、歯髄組織が腐敗して歯に色素が浸透してしまうことに起因します。
したがって、歯に変色がある場合には、歯の神経が既に取られているか、何らかの異常があると診断できます。
さらに診断を確定するために、レントゲン撮影やCT撮影、電気歯髄診断などを行います。
これらの検査結果を総合的に判断して、歯の神経が生きているか死んでいるかを診断します。
初診時口腔内。右側前歯(向かって左)の変色を主訴に来院。外傷の既往があり、歯の先端部の半分くらいにコンポジットレジンによる大きな充填を認める。このような場合、問診と視診だけで歯髄壊死があると推察できる。セラミッククラウンによる審美治療が適応だが、まずは根管治療が必要と考えられる。
初診時レントゲン。歯根の先端部に、骨の吸収像である大きな黒いレントゲン透過像を認める。歯髄壊死から継発した根尖病巣(慢性根尖性歯周炎)と診断した。歯を温存するために、まずは根管治療をしっかりと行う必要がある。
根管治療中レントゲン。ファイルを挿入し、根管の走行と長さを確認する。
根管治療後レントゲン。歯根の先端まで、白い薬が緊密に隙間なくしっかりと詰まっているのが分かる。このような治療の状態であれば、安心して被せ物を作っていくことが出来る。ここがきちんと治療できていないと、後で歯槽骨の破壊が進行し、歯茎が腫れたり痛みを生じて、歯を失う原因になる。
治療後。オールセラミッククラウンによる補綴処置(被せること)を行った。左右で色も合い、歯肉との調和もとれ、きれいな口元になった。
患者さんの希望により、左右の色、形態を合わせるよう、キャラクタライズを行った。
患者さんの主訴が歯の色の改善であっても、現在抱えている問題点をすべて洗い出し、的確な診査・診断をし、適切な治療を行うことが、歯を良い状態で永く保つのにとても重要です。
木を見て森を見ない治療では、すぐに治療のやり直しになったり、歯を失ったりすることになります。
特に医療は、木も森も見ることがとても大切なのです。