歯の神経が壊死(えし:死ぬこと)したり虫歯で神経を取ると、歯の色は徐々に暗くなり、やがて茶色や黒色に変色していきます。
特に前歯では審美的に問題になることが少なくなく、しばしばご相談にみえる患者さんがいます。
このような場合、治療の方法としては
①セラミッククラウンで補綴(ほてつ:被せること)をして隣在歯と色を合わせる
②漂白(ウォーキング・ブリーチ)をする
の二つの方法が考えられます。
ご自身の歯がすでに虫歯で大きく削られている場合には、歯の破折を予防する観点から、セラミック・クラウンでの治療が望ましいでしょう。
また、歯の変色が極端に強い場合にも、漂白では満足できる審美的な改善が得られないため、セラミッククラウンによる治療が最善です。
しかし、変色の程度が軽く、またご自身の歯が大きく削られていない場合には、漂白(ウォーキング・ブリーチ)でも審美的な改善が期待できます。
ここでは、ウォーキング・ブリーチの治療例について解説します。
左上1番(向かって右)の前歯の変色を主訴に来院。虫歯により歯の神経が壊死し、変色をきたした。審美的に大きな問題となっていることが分かる。幸いにもご自身の歯が原型をとどめているので、ウォーキング・ブリーチで漂白を行うこととした。
咬合面観。ウォーキング・ブリーチに先立って、根管治療が不完全な場合には、まずこれを完璧に行う必要がある。そうでないと、薬剤が歯根の先端から漏れ出てしまい、歯槽骨を破壊する恐れがある。根管治療が済んだら、歯の内部に漂白剤を入れ、定期的に交換をしていく。
このケースでは、ウォーキング・ブリーチだけでは漂白の効果が十分ではなかったため、合わせて歯の表面からもホワイトニングを行った。
術後。十分な漂白効果が得られ、審美的にも満足できるものとなった。歯の裏側の穴はコンポジットレジンで充填し、歯を大きく削ることなく治療が完了した。
ご自身の歯が大きく削られておらず、かつ変色の程度が軽度な場合には、ウォーキング・ブリーチは優れた治療法と言えるでしょう。
しかし、歯がすでに多く削られているケースは、強度の観点からセラミッククラウンによる補綴が望ましいと言えます。
また、極度の変色の場合には、ウォーキング・ブリーチでは審美的な改善が難しいため、やはりセラミックによる修復が最善です。
歯の変色でお悩みの方は、ご自身にとってどのような治療方法が最善なのか、一度担当の先生とご相談されてみるのが良いでしょう。