時々、鼻の横(鼻翼の付け根)を押すと痛みや違和感があるというケースがあります。
副鼻腔炎(上顎洞炎)でもそのような症状が出ますが、一番疑わしいのは上顎の前歯、特に犬歯の根尖病巣が疑われます。
上顎の犬歯の根尖(こんせん;根っこの先端)は、ちょうど鼻の横の辺りにあります。
したがって、犬歯に根尖病巣(こんせんびょうそう;根の先の炎症)が出来ると、顔の表面から指で少し強めに押すと痛みを感じるのです。
根尖病巣は、重度の虫歯や外傷による歯髄壊死(しずいえし)、不適切な根管治療(歯の神経の治療)などで生じます。
レントゲンを撮影して診査することで、鼻の付け根の痛みの原因が歯にあるのか否か、ほとんどが診断可能です。
初診時レントゲン。右の鼻の付け根を押したときの痛みを主訴に来院。右側上顎犬歯は神経を取ってあり、補綴物(被せ物)が装着してある(白いレントゲン不透過像)。根管治療が不十分で、歯根の先端に骨の吸収を疑わせる黒いレントゲン透過像を認める(根尖病巣)。
同部のCT画像。根管(根の内部)には白い根管充填材を認めるが、根尖(歯根の先端)まで詰まっておらず不完全な治療の状態であるのが分かる。根尖部には、根尖病巣による黒いレントゲン透過像を認める(矢印)。これが鼻の横を押したときの痛みや違和感の原因となる。この症状の改善には、根管治療を正しくやり直す必要がある。
ファイル(治療用の細い器具)を歯根の内部に挿入して、根管の長さと方向を確認しているところ。根尖までファイルが届いているのが分かる。
根管治療後。白い薬が歯根の先端までしっかりと緊密に充填されているのが分かる。適切な根管治療を行うことで、鼻の横の痛みは完全に消失した。
根尖病巣は、放置すると徐々に大きくなり、難治性になっていきます。
基本的に、様子を見ていても根尖病巣は治癒することはないため、治療は早めに行った方が得策でしょう。