矯正治療を希望される人のほとんどが、前歯の歯並びの改善を希望しているかと思います。
部分的な矯正治(MTM)は、簡単なように見えて、実は上下の歯の噛み合わせを合わせるのが非常に難しい治療です。
特に上顎だけあるいは下顎だけのように、片方だけの歯並びの改善・治療を希望する場合、基本的に嚙み合わせを合わせることは困難です。
これは、上下の歯並びは対になっており、悪い歯並び同士で辻褄が合っているためです。
上下のいずれかだけの歯並びを治すとバランスが崩れ、歯並びはきれいに並んだものの噛みにくくなることがあります。
その点、全顎矯正は全体を動かすことが出来るため、咬み合わせの改善を図ることが可能です。
治療前。下顎前歯部のクラウディングの改善を主訴に来院。以前、他院にて矯正治療を行ったが、後戻りしたため再矯正を希望。上顎は気になっておらず、下顎だけの改善を希望。下顎を前方に動かすと、左側中切歯(向かって右)だけしか噛み合っていないのが分かる。このような噛み合わせは、咬合性外傷による歯周病に罹患しやすい。
矯正治療後。ディスキング(IPR、ストリッピング)を行い、歯と歯の間にわずかな隙間を作り歯並びを改善。下顎前歯部はきれいに並び、下顎前方運動時も左右の中切歯が均等に咬合するようになった。
部分矯正(MTM)は、費用、期間などの点で魅力的に感じるかもしれません。
しかし、部分矯正では基本的に便宜抜歯をしないため、歯並びを整えるスペースを十分に確保することは難しく、難易度は高いのです。
特に重度のクラウディング(叢生、乱杭歯)の程度が強い場合、歯並びをきれいにすると結果的に出っ歯になったり開咬(オープンバイト)になることもあります。
矯正治療をお受けになる際には、治療後の仕上がりについて、術前に十分なカウンセリングをお受けになる必要があるでしょう。
治療費:¥440,000
治療期間:6か月
治療におけるリスク:歯列矯正では歯根吸収や歯肉退縮、知覚過敏が生じる可能性があります。