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虫歯による歯髄壊死から生じた大きな根尖病巣~インフォームドコンセントの重要性~

歯科医師は、なるべく深い虫歯であっても、極力歯の神経を温存するように努めます。

これは、歯の神経は歯に栄養を供給しており、神経が無くなることで歯が枯れ木のように脆くなることを知っているからです。

神経が無くなった脆くなった歯は、将来破折やひび割れを起こし、抜歯になるリスクが高くなります。

また、歯の神経の治療である根管治療をどんなに精密に行ったとしても、治療の成功率は決して100%ではなく、将来歯根の先端に根尖病巣と呼ばれる炎症を生じる可能性もあります。

しかし、深く大きな虫歯の場合、歯の神経を温存した治療をした後、しばらくして神経が失活して壊死してしまう(死んでしまう)ことがあります。

これを歯髄壊死(しずいえし)と呼んでいます。

 

初診時レントゲン。右側下顎小臼歯部の歯茎の腫れと痛みを主訴に来院。下顎犬歯~第一小臼歯の根尖部にかけて黒く大きなレントゲン透過像を認める。第一小臼歯には大きな虫歯の治療跡とみられるコンポジットレジンが充填されている。

 

初診時CT画像。第一小臼歯を中心として、隣在歯におよぶ大きな黒いCT透過像を認める(矢印)。電気歯髄診にて、犬歯および第二小臼歯は生活反応を認め(生きている)、第一小臼歯は生活反応を認めなかった。このため、第一小臼歯の虫歯治療後に生じた歯髄壊死と診断し、根管治療を行うこととした。

 

根管充填後レントゲン。根尖まで白く緊密に薬が詰まっているのが分かる。

 

根管治療9か月後。第一小臼歯根尖部の黒いレントゲン透過像はほぼ消失し、骨が再生してきていることがうかがえる。

 

治療後9か月後CT画像。歯槽骨の再生により、術前にあった根尖部の透過像が無くなっているのがよく分かる。術前の診査による原因歯の特定が、治療上極めて重要となる。

 

その時々で最善と思われる処置を行ったとしても、歯髄壊死が起こることは不可抗力であり、状況の厳しい虫歯の治療を行った場合には起こる可能性があります。

治療後、痛みや歯髄壊死が生じることがある程度予測されるくらい深い虫歯だとしても、歯の神経を残せる可能性があるのであれば、それをトライすることは臨床上しばしばあります。

ただ、このような状況の場合には、事前に患者様に治療の予後について説明をしておくことが必要でしょう。

患者様によっては、説明をお聞きになった上で、無理に神経を残さず予め根管治療を選択されたい方もいるかもしれないからです。

 

しかしながら、やはり多くの患者様は、たとえ治療が2度手間になったとしても、歯の神経をなるべく温存することを希望されます。

インフォームドコンセントがしっかりとなされていれば、仮に治療後に歯髄壊死になってしまい根管治療が必要になったとしても、治療結果に不満を抱くことはほとんどありません。

治療法を自分自身の責任において選択したのですから。

でも、このようなやり取りを患医で行うことは、わが国の歯科医療ではあまり一般的ではないかもしれません。

医療従事者は、治療に必要な情報を十分に患者様に提供す義務と責任があり、患者様は自身の責任において治療法を選択する権利があるのです。

分からない点があったり、不安なことがあれば、遠慮せずに担当医に説明を求めるようにしましょう。

 

治療費:精密根管治療(小臼歯)¥88,000

治療期間:6週間

治療上のリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。治療中、一時的に痛みや歯肉の腫脹を生じることがあります。

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日付:   カテゴリ:コラム, 根管治療

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