歯の中には歯髄(しずい)と呼ばれる神経が入っており、虫歯が大きくなり痛みを生じるようになると、歯髄を取り除く必要があります。
また、大きくて深い虫歯の治療後、歯髄が壊死(えし)してしまった場合にも、壊死して変性した歯髄を取り除く必要があります。
歯根の内部には根管と呼ばれる歯髄が入った管があり、この根管を通って歯の内部に交通しています。
根管は、非常に細く、湾曲していたり枝分かれして複雑な形状になっており、特に臼歯(奥歯)においてはこれが顕著です。
根管治療で使用するファイルと呼ばれる器具は非常に細く、真っ直ぐなため直進性があり、湾曲した根管の治療はたとえ経験豊富な歯科医師であっても難しいです。
金属疲労によるファイルの破折や、本来の根管から逸脱して根管形成をしてしまうトランスポ―テーション(リッジやジップなど)などを生じるリスクが高く、これらは根管治療を成功に導くことを困難にしてしまいます。
したがって、湾曲した根管や石灰化して細くなった根管は、治療の難易度が極めて高いのです。
初診時レントゲン。大きな金属のインレーが詰めてあり、大きな虫歯治療の痕跡が認められる。根尖から根分岐部にかけて、黒いレントゲン透過像を認める。歯髄電気診査にて生活反応が認められないことから、歯髄壊死から生じた慢性根尖性歯周炎と診断し、根管治療を行うこととした。湾曲の強い4根管をもつ大臼歯であり、治療の難易度は非常に高い。
根管充填後レントゲン。根尖までしっかりと根管充填されているのが分かる。この時点ではまだレントゲン透過像に変化はなく、骨の再生は認められない。
治療1年4か月後。根尖から根分岐部にかけて存在したレントゲン透過像は完全に消失し、骨の再生を認める。
湾曲した根管をもつ歯の根管治療は、特に時間をかけて慎重に治療を行う必要があります。
大臼歯では少なからず根管は湾曲しており、根管治療の難易度が高いため、経験豊富な歯科医院での受診をお勧めします。
治療費:精密根管治療¥99,000/大臼歯
治療期間:2か月
治療におけるリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。湾曲根管や石灰化した根管では、ファイルの破折のリスクがあります。