治療した歯の歯茎の腫れを主訴に来院する患者さんは非常に多くいます。
このような場合、問診だけで歯の状況をある程度推測すること可能です。
歯茎が腫れる原因の多くは
①根尖病巣(慢性根尖性歯周炎;根の先の炎症)
②歯の破折やクラック(ひび割れ)
③歯周病(慢性辺縁性歯周炎)
④穿孔(パーフォレーション;歯根に穴が開いている)
のいずれかです。
歯周病で歯茎が腫れる場合には、歯根を支える歯槽骨の吸収が進んでいるため、同時に出血や歯のぐらつき、動揺などの症状も伴います。当然ながら深い歯周ポケットも存在します。
歯の神経の治療のことを根管治療と言いますが、根管治療は非常に繊細で難しい治療であるため、日本の保険の治療で正しく行われていることはあまりありません。
根管治療が正しく治療されていないと、歯の内部でバクテリアが繁殖し、やがて根尖病巣を生じるようになります。
根尖病巣は、慢性化すると難治性の歯根肉芽腫や歯根嚢胞(しこんのうほう)へと進行するので、早期に治療を受ける必要があります。
初診時。歯茎の腫れを主訴に来院。他院で抜歯と宣告されたが、抜歯せずに治療できないかを相談にみえた。歯周ポケットが存在しないことから、歯周病は否定された。
初診時レントゲン。すでに根管治療がしてあるものの、根管充填が不十分。根尖(歯根の先端)から歯根分岐部(歯根の股の部分)にかけて、骨吸収による黒いレントゲン透過像を認める。歯根のクラックやパーフォレーションも疑われた。
診査を兼ねて根管治療を行うこととした。クラックやパーフォレーションは存在せず、根管治療で治癒する可能性が高いと判断した。
根管充填後。歯茎の腫れは消失し、疼痛や排膿、打診痛、咬合時痛などの症状が無いのを確認し根管充填を行った。根尖までしっかりと薬が詰まっているのが分かる。
治療後。ファイバーコアにて支台築造し、オールセラミッククラウンにて補綴(ほてつ)を行った。補綴に先立ち、全顎に対し歯周病治療としてSRP(ルートプレーニング)を行い、歯周組織の改善を同時に行った。
歯の治療、特に根管治療はやり直しが非常に多い治療です。
やり直しの治療は成功率が有意に下がるため、費用が掛かっても最初からきちんと治療を行った方がかえって治療費を抑えることができ、自分の歯を長持ちさせることが出来ます。
根管治療が必要になった場合には、経験豊富な歯科医師のもとで治療を受けることがとても重要です。
治療期間:2か月
治療費:精密根管治療¥77,000
ファイバーコア¥22,000
オールセラミッククラウン¥110,000
治療上のリスク:根管治療の成功率(治癒)は100%ではありません。根管治療中は一時的に痛みや歯茎の腫れが生じることがあります。