大きな虫歯があったり、深い虫歯治療の後に歯の強烈な痛みや歯茎の腫れを生じることがあります。
虫歯菌が歯の神経(歯髄)に達すると、やがて根尖(歯根の先端)から歯槽骨へと感染が広がっていきます。
その結果、根尖部の歯槽骨が溶け(この状態を根尖病巣と呼ぶ)、膿が溜まり、その膿を排泄させるために歯茎に腫れを生じます。
このような状況の場合には、根管治療が必要になります。
もし、根管治療を行わなければ歯槽骨の破壊が進み、抜歯を余儀なくされます。
根管治療は、抜髄(生きている神経を取る処置)もしくは歯髄壊死(すでに神経が死んでしまっている)した歯の感染根管治療である初回治療(初めて行う治療)と、すでに一度根管治療を行っている歯のやり直しである再根管治療とに分けられます。
根管治療の成功率は、初回治療と再根管治療ではまったく異なります。
初回治療の成功率は極めて高く、90%以上となっています。(専門医が正しく治療を行った場合)
しかしながら、やり直しの治療である再根管治療では、その成功率は一般的なもので70%以下になるというデータになっています。
それだけ再根管治療を成功させることは難しいと言えます。
したがって、根管治療は初回治療できちんと正しく行うことが重要ということになります。
根管治療前レントゲン。左下の奥歯の歯茎の腫れを主訴に来院。根尖部は根尖病巣による黒いレントゲン透過像を認める(矢印)。このような根管治療をまだ行っていないものは、正しく根管治療を行うと治癒する可能性は90%程度は見込める。
初診時CT画像。根尖部に明らかな黒い骨吸収像(根尖病巣)が見られる(矢印)。深い虫歯が原因の歯髄壊死と考えられる。歯根が3本で4根管をもつ歯であることが分かる。根管治療において、術前のCT診査は極めて重要で、根管の本数や湾曲の把握、根尖病巣の広がりや根管との関連性などを正確に診査できる。しばしばイレギュラーな歯根や根管を持つものが見つかることがある。
根管充填後レントゲン。根尖までしっかりと白い薬が入っているのが分かる。バイオセラミック・シーラーにて根管充填を行った。歯茎の腫れも完全に消失した。
治療3か月後レントゲン。根尖病巣は治癒し、黒いレントゲン透過像は消失しているのが分かる(矢印)。
治療3か月後CT画像。初診時CTと比べると、根尖部の骨吸収像の違いがはっきり分かる。正しく診査・診断をしてきちんと根管治療を行うと、自己の治癒力によって歯槽骨はドラマチックに再生してくる。
歯の治療において最も重要なのは、正しい診査と診断です。
根管治療は特に難しい治療ですが、その成功率・治癒率を術前にある程度把握することで、正しく診断し、患者さんにも適切に説明を行うができます。
これは、患者さんが治療を受けるか否かを判断するためにとても重要な意味を持ちます。
治療を受けても治る見込みが少ないのであれば、治療を受けないという決断をすることもできます。(抜歯をしたくない場合)
あるいは、根管治療ではなく外科的歯内療法(歯根端切除)をはじめから選択するということもできます。
もちろん、治る見込みが少なくても、治療して治すことにトライしたい考える方もいます。
治療はより人生がより良くなるために受けるものであって、QOLが下がるような治療は必ずしも必要とはいえないと考えています。
治療費:精密根管治療¥99,000
治療期間:2週間
治療におけるリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。