4つある副鼻腔のうちの一つである上顎洞。
上顎洞は頬の内側、目の下部、上顎臼歯の上部に存在する副鼻腔の一つです。
上顎臼歯とは非常に近接しており、歯根が上顎洞の中に入っているものも少なくありません。
上顎臼歯が何らかの影響で炎症が起こり、炎症が広がって上方に向かうと、上顎洞の内部に炎症を惹起します。
これを歯性上顎洞炎と呼んでいます。
歯性上顎洞炎の原因となるものは、慢性辺縁性歯周炎(いわゆる歯周病)、慢性根尖性歯周炎(いわゆる根尖病巣)、そのほかに歯根破折やパーフォレーション(穿孔)などが挙げられます。
これらの原因中で、歯の治療を行って治るものは慢性根尖性歯周炎(根尖病巣)です。
歯周病や歯根破折の場合には、歯の治療を行っても治らず、無駄に時間を費やし、鼻症状を酷くしてしまうので、早期に抜歯を行うことが得策です。
中には、歯の異常があるにも関わらず、耳鼻科に1年以上通院しているケースを見かけますが、歯が原因の上顎洞炎は耳鼻科に通院し続けても治らないので注意が必要です。
初診時レントゲン。他院にて右側上顎第二大臼歯の歯性上顎洞炎の診断を受け、抜歯と宣告され初診来院。右側上顎第二大臼歯部には大きな虫歯治療がしてあり、根尖部には黒いレントゲン透過像を認め(矢印)、歯髄壊死を窺わせる。
初診時CT画像。根尖部には根尖病巣による黒いCT透過像を認める。根尖病巣が大きくなり、上顎洞の内部にもCT不透過性の炎症像を認める(軽微な歯性上顎洞炎/矢印)。このような軽微な歯性上顎洞炎(上顎洞粘膜の肥厚)は、正しく根管治療を行えば治癒する可能性が極めて高い。
根管治療後レントゲン。根尖までしっかりと白い薬が入っているのが分かる。
根管治療後CT画像。根尖部の上顎洞の粘膜肥厚は消失し(矢印)、歯性上顎洞炎は治癒してきているのが分かる。
歯性上顎洞炎は、必ずしも抜歯が治療の第一選択ではありません。
抜歯が第一選択になるのは、歯周病によるもの及び歯根破折によるものです。
診断を正しく行わないと、治るものも治らず、不要に抜歯を行うことになりかねません。
もし、歯性上顎洞炎と診断されたら、経験豊富な信頼できる歯科医院でご相談されることをお勧めいたします。
治療費:精密根管治療¥99,000/大臼歯
治療期間:3週間
治療におけるリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。