根管治療は、歯の神経の治療のことです。
虫歯が深く大きくなり、歯の神経(歯髄;しずい)にまで達すると、強くしみたり、痛みを感じるようになります。
さらに、深く大きな虫歯を放置すると、歯の神経が死んで(壊死;えし)腐敗してしまいます。
また、一度根管治療を終えた歯でも、根管治療が適切にされていないと、歯根の先端に炎症が生じ、慢性根尖性歯周炎(根尖病巣、歯根肉下種、歯根嚢胞など)を引き起こします。
このような場合にに根管治療が必要になります。
根管治療では、歯根の中になる根管と呼ばれる非常に細い神経の管(根管)を完全に機械的に拡大し、EDTAや次亜塩素酸ナトリウムなどの薬液にて十分に洗浄し、内部のバクテリアや腐敗した歯髄組織、プリデンティン(象牙前質:幼弱な象牙質)などを徹底的に取り除きます。
清潔になった根管は空洞となり、このままでは再びバクテリアの温床になるため、根管を薬剤にて完全に密封する必要があります。
この作業を根管充填(こんかんじゅうてん)と呼びます。
根管充填で使用される薬剤(根管充填剤)には、ガッタパーチャと呼ばれる樹脂様のものとシーラーと呼ばれる練り薬で、多くの場合このガッタパーチャとシーラーを併用して根管充填を行います。
シーラーには多くの種類が存在し、酸化ユージノール系、非ユージノール系、レジン系、シリコン系、水酸化カルシウム系、ケイ酸カルシウム系(MTA)などがあります。
それぞれ特徴や薬効が異なり、ケースにより使い分けをします。
根管充填剤のシーラーとして近年注目されているのは、生体親和性が非常に高く、強アルカリ性で抗菌性を維持できるバイオセラミックスです。
その特徴は
●PH11~13と強アルカリで抗菌性がある
●硬化時にわずかに膨張するため、緊密な充填が可能
●レジン成分やビスマス、ユージノールなどを含まず、生体適合性が高い
当院では、精密根管治療にBRASSELER USA社のEndoSequence BC SealerおよびAngelus Japan社のBio-C Sealerを使用しています。
他の種類のシーラーと比べて根管充填後の痛みは少なく、予後は非常に良好です。
ただし、健康保険の非適応で非常に高価な薬剤となります。
BRASSELER USA社のEndoSequence BC Sealer
Angelus Japan社のBio-C Sealer
バイオセラミックスであるEndoSequence BC Sealerによる根管充填。根尖まで緊密な充填がなされている。
最善の治療を行うためには、適材適所で最適な材料や薬剤を使用することが必要です。
多少コストがかかりますが、より良い予後を得るためには、そして歯を長く持たせるためには、何より健康には代えられません。